Tropical Medicine and Health Update 2019報告

熱帯医学セミナーアドバンス編

Tropical Medicine and Health Update 2019

日 時 2019年8月31日(土)13:15-18:00 受付開始 13:00
内 容 <熱帯医学セミナーアドバンス編>マヒドン大学熱帯医学部のコース修了者(DTM&H,MCTM)による講演

【セミナー報告】

TMU2019はマヒドン大学熱帯医学部のコース修了者によるセミナーです。マヒドン大学熱帯医学研修のアドバンスコースの位置づけになります。日本では初めての開催でした。順天堂大学医学部での開催で、感染症医を中心に36名の方が参加しました。
森博威先生のオープニングで幕を開けました。セミナーのお知らせの後、熱帯医学の総論として熱帯病の基本、感染経路の違い、衛生状態、文化との関わりについて学びました。
石岡春彦先生によるマラリアのレクチャーでは、30歳インド人の重症マラリアについて症例検討を行いました。日本においてマラリア診療を行うことを念頭においた診断、治療についてエビデンスに基づいた分かりやすい解説でした。特にアーテミシニンとキニンの効果について理解が進みました。
続いて羽田野 義郎先生によるメイオイドーシスの講義でした。メリオイドーシスはタイ東北部ではCommonな疾患ですが、日本ではほとんど症例がなく、イメージが湧きにくい疾患です。メリオイドーシスの多彩な臨床像、疫学の特徴を中心に簡潔にまとまった講義でした。メリオイドーシスは以前、東南アジア、オーストラリアに限定されていると考えられていた疾患ですが、世界中に広がりつつあることを知りました。

TMU2019
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武野亨先生によるデング熱のレクチャーでは、重症デングのマネージメントを中心に診断、治療のポイントを分かりやすく理解することができました。重症例では解熱後に重症化することがあり注意すること、Warning signについて、また輸液管理のポイントについて整理ができました。重症化のメカニズム、ワクチンについてもUpdateすることができました。質疑応答では、フロアから臨床経験の共有もあり、活発なディスカッションを行いました。
和足孝之先生によるAcute febrile illnessの講義は圧巻で盛り上がりました。発熱疾患の内訳は国によって異なり、国の中でも地域によって変わること。環境、衛生状態、文化等様々な要素が関わるため注意が必要であること。またAFIの定義、発熱患者へのアプローチも医師の技量や検査によって異なること。発熱疾患はその地域の疫学的な特徴を考えながら、感染症診療、内科診療の基本にのっとり、丁寧に診断、治療することが大切であることを学びました。
横田和久先生のHIVの講義では、現在のHIVの現状を学ぶことができました。HIV感染者の寿命も健常者と変わらなくなってきた一方で、生活習慣病や悪性腫瘍のリスクが上昇してきたこと。感染症ではA型肝炎、C型肝炎について注意が必要であることを学びました。質疑応答ではDTGの神経管損傷の報告に対して、妊婦への使用の可否について日本と海外での受け止め方の違いについてもディスカッションを行いました。

TMU2019
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倉橋幸也先生は小児の低栄養についてのレクチャーでした。低栄養の世界での疫学的な特徴、低栄養のリスク、感染症についても学ぶことができました。アフリカでの低栄養の現状、臨床的特徴、タイーミャンマー国境沿いでの現場の話についてフロアと双方向性にディスカッションを行いました。
森博威先生は消化管原虫の講演を行いました。消化管原虫の共通の特徴としてCystという外界で安定な形態があること、そのため水を介して感染のアウトブレイクが起こることを共有しました。CryptosporidiumやMicrosporidia等の原虫は人畜共通感染であり、また免疫不全患者ではより感染率が高く重症化することを学びました。場所が変わり衛生状態や文化が変わることで疾患も変わるため、日本での診療の感覚で、海外で診療することは危険であること、熱帯医学について学ぶことの大切さを共有しました。
最後に小山洋史先生のレクチャーは熱帯感染症の肺エコーでした。Resourceが乏しい開発途上国で、肺エコーの可能性について共有しました。エコーの所見では肺のBlineを中心にARDSや肺炎の患者さん肺エコーの所見について、実際の患者さんのエコーの所見をみながら学びました。今後の肺エコーの可能性を感じることができるレクチャーでした。
タイや各現場での話をベースに多様なトピックでのレクチャーでした。学ぶことの多い有意義なセミナーでした。今後一年に一回の開催を目指します。

TMU2019
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